ハイブリッド・コピーライター田村正純の足跡

コピーライターの地位を高める戦い。

私はもともとコピーライターでした。
地方都市の広告の企画制作プロダクション2カ所に約3年勤めた後、独立しました。 その後、フリーのコピーライターとして3年ほど仕事しました。
しかし、当時はまだコピーライターが注目される前の時期で、その認知度は複写機関係の仕事とまちがわれることもあるくらい低いものでした。
また、請求書に「企画料」「コピー料」という項目を立てても、クライアントに「これ、何?」と言われるような場合もあるほどでした。独立した項目として認められず、「デザイン料」の中に組み込まれていたのです。
そんな状況を何とかしたい、コピーライターの存在をもっと認知させたい、という気持ちが高まり、コピーライターだけのプロダクションという発想にたどりつきました。

通常、広告の企画制作プロダクションの場合、そのスタッフとして、ディレクター、デザイナー、イラストレーター、コピーライターなどが一つのチームを構成します。
その中で一番お金をとりにくいのがコピーライターなわけですから、コピーライターだけのプロダクションというのは無謀だったと言えるかもしれません。
しかし、コピーライターというのは、一般的には単にコピーを作成する人としか見られていませんが、実は広告を作成する上で、そのアイディアや仕掛けを考えたり、コンセプトワークの中心になる場合が多い、きわめて重要な存在であることは業界では常識でした。
コピーライターとしてのレベルを高めれば、そしてコピーライターだけの会社というユニークさをアピールすれば、それを認めてくれる広告代理店や印刷会社、同業者は相当いるはずとの読みがありました。

スタッフは5?6人。独立することを前提に入社してもらいました。
私もそうでしたが、将来の目標が明確であればあるほど、仕事への取り組み方、自分の磨き方が意欲的になるからです。
予想通り、仕事は順調に入り、忙しさに追われる日々が続きました。
一つひとつの仕事のクオリティを保ち、スタッフの成長を促すプログラムを考える。
すべての仕事に目を通し、経営的なこともあれこれ考えなければいけない。
しかし、人を雇うということは思った以上に煩雑な面を伴うものでした。

同時進行の仕事が50本近くになり、睡眠時間はどんどん減っていき、3?4時間に。
夜は頭が疲れて働かないので、朝2?3時に起きて仕事をこなすという生活パターンになってしまいました。
週末ともなると心身共にボロボロ状態で、しまいには、自分が何のためにこの会社をつくったのかよくわからなくなる始末でした。
そんなこんなで5年が過ぎ、スタッフが成長し、それぞれが独立するメドが立ってきたころ、「マルチメディア」という言葉が登場し、そして「インターネット」が現れました。
1995年のことです。これは衝撃でした。
スタッフを独立させたら、また新しい人材を入れて同じことを繰り返す気持ちにはなれませんでした。
コピーライターの認知度向上に貢献するという目標は達成したという自負がありましたし、何より自分を取り戻すことが重要だと思いました。
ちょうどそのとき救世主として目の前に現れたのがインターネットだったのです。

ホームページの価値を高める戦い。

初めは広告の世界もこれで相当変わるだろうと考えましたが、すぐ広告だけでなく社会全体を変える可能性を持ったものであることを確信しました。
そして、ただ広告作成の手段や表現として取り組むだけでなく、新しいビジネスとして真正面から取り組んでみようと決意しました。
それまで培ってきた取引関係をいったん閉じ、インターネットビジネスを一から始めることにしたのです。
それからは啓蒙活動に追われました。
インターネットの仕組みがどうなっているのか、ホームページをどのように作成するのか、同じ説明を何度繰り返したかわかりません。
しかし、その価値は認めてもらえても、なかなか仕事には結び付きませんでした。 実際、インターネットに接続している人がまだまだ少なく、仕方ない面もありました。
数年後には仕事も増え、ウェブプロダクションとしての経営も成り立つようになりましたが…。

そして、年々得意先が増え、今や睡眠時間は2?3時間です。
しかし、以前のようなボロボロ状態ではありません。
進化を続けるインターネットの新しい技術やノウハウを日々勉強しなければいけませんから、忙しいと言ってるヒマもないのです。
もしかすると私は、日本一たくさんのホームページを作成してきた人間かもしれません。
日本で最も長期間WEBクリエイターとして仕事している人間かもしれません。
そんな私がずっと痛感していることがあります。
それはクライアントのホームページ担当者=ウェブマスターとの協力関係なくして、いいホームページ(=マーケティングまでトータルにデザインされたホームページ)を創り上げることは難しいということです。
しかし、理想的な「協力関係」はなかなか築きにくいのが実情です。
発注する側の経営者やホームページ担当者がホームページ制作会社やWEBクリエイターの特性を知らなさ過ぎて、その力をうまく引き出せていない状態なのです。

それは、なぜか。
ホームページ担当者の置かれている状況が、そのような状況をつくり出しているといってもいいでしょう。
ホームページの場合、媒体としての理解度に組織内でもバラツキがあり、ホームページ担当者が啓蒙的な役割まで果たさなければならず、その負担がきわめて大きいものになっています。
その結果、社内の意見調整に手間どり、身動きがとれない状態になって、せっかくのホームページ制作会社の意見や提案を十分に生かせない場合が多く見受けられます。
私はクリエイターの立場だからこそよく分かるホームページ担当者=ウェブマスターのあり方を示したいと考えています。
豊富な経験をもとに、もっといいホームページにしたいと燃える経営者やホームページ担当者=ウェブマスターのみなさんに、「マーケティング力のあるホームページを作成する方法」を伝授することが使命だと考えています。